1993年の創業以来、着実に店舗数を増やしている天然とんこつラーメン一蘭。今や全国に70店舗を超える店舗数を誇る一蘭を調べてみた。
私が住んでいる街に一蘭がオープンして数年くらいたっただろうか。オープン時に興味本位で食べに行った。その時は「味集中カウンター」など何やら風変わりなチェーン店が出来たくらいにしか思わなかった。あれから数年が経過して、ふと「そういえば一蘭は今どうなっているのだろう」と思い出した。
あの当時の私は飲食業ではなかったので、あまり深くは考えなかったが今は完全に飲食業界で生きている。とんこつラーメン屋で70店舗以上を運営するまでに至ったのは何故か。そんな一蘭に興味を持ち再訪することにした。
<この記事のポイント>
.今から飲食店をやってみようかと思う人は参考になります。
.どのようなビジネスでも成功する要因は似たり寄ったりなので異業種でも参考になります。
.将来、飲食業をはじめる予定が無い方でも一蘭に行く人は「さらにラーメンが美味しくなります」
再訪するにあたり今一度「一蘭」とはどのようなラーメン屋さんかを調べてみた
前回、お店に訪問したときは飲食業界の人間ではなかったので「勉強」という意識はなかったが今回は違う。なので、数年ぶりに再訪するにあたり一蘭がどのようなラーメン屋さんなのかを勉強して行くことにした。
一蘭は福岡市博多区中洲に本社を構えるラーメンチェーン店を運営する会社で1993年の創業以来、順調に店舗を増やして行き2018年4月現在77店舗ものお店を日本全国に展開する一大とんこつラーメンチェーン店として全国に名を馳せています。
そんな巨大ラーメンチェーンの一蘭ですが、その誕生秘話には驚いた。
通常、創業者が商品となるラーメンを開発するのが大多数だと思う。しかし一蘭は違った。もともと一蘭の前身は昭和35年に「双葉」という店名で屋台としてスタート。その後、昭和41年に山口県小郡市に移転し「一蘭」として店舗営業をスタート。その後、創業者夫婦が高齢のため廃業を常連客に伝えたところ「お店をやめないで欲しい」と懇願され営業を継続。
そのような中で一蘭の代表者の吉富氏が初代創業者に懇願してレシピを伝授してもらう。そして現在の一蘭が誕生したという。本当に美味しい飲食店はこのように顧客が引き継ぐと言うこともあり得るのだと驚いた。
高品質な商品と斬新なアイディアの融合
一蘭と言えば有名なのが席にそれぞれ仕切りがあって隣近所が全く見えない「味集中システム」。初回の来店時には「あぁ、まーた派手な演出のお店が出来たな」と気にも留めていませんでした。しかしながら、今は捉え方が違います。
私のお店は今のところ小さな小規模店舗なので「独自性」をアピールすることは簡単です。でも、どうでしょうか。これをチェーン展開するとなると話は違います。今は創業者である私がお店に立っていますから今のままで問題はありません。
でも、しっかりと標準化して全て従業員の力によって成り立つような「仕組み化」をしていった場合は今のスタンスではやっていけないでしょう。そのような条件の中で一蘭はすごく上手に「差別化」を図っています。
「弊社は世界一とんこつラーメンを研究している会社です」
この言葉は一蘭の代表者である吉富氏が発した言葉です。飲食店として、まずは「高品質」な商品をお客様に提供するといった本当に基本的な要素を一蘭は実直に貫いています。とんこつスープも「水」からこだわり研究に研究を重ね独自の製法で自社工場生産を続けています。
もちろん「麺」に関しても同様で小麦から厳選し高品質な麺を作っておられます。ラーメンというと私個人の感覚では「スープは美味いが麺がまずい」「麺は美味いがスープが不味い」このようなアンバランスなラーメンが多いような気がします。しかし一蘭は違いました。スープも麺も高品質なものだったと感じました。
ここから先は個人的な趣向・見解ですが一蘭のラーメンは「替え玉」をかなり意識したスープを作っているのではないかと強く感じました。と、言うのも強烈に美味いスープは一杯目から「飲める」んです。でも、一蘭のスープは「そこ」が絶妙で一杯目なのにスープを飲み干せない。決して不味い訳ではないです。しかし、普通のラーメンには無い「特殊な特徴」があることは間違いないですね。
とにかく「麺」が美味い。麺とスープのバランスからすると麺が際だっています。とんこつラーメンのお店は「替え玉」が最も利益の上がるサイドメニューであるというのは通例ですが、このお店はまさに最も利益率の高い「替え玉」をかなり意識しているお店だと感じました。
すごく美味しいのだけれど最初の一玉目では飲みきれない、なんとも巧妙なスープです。
さらに一蘭にはお客様の趣向に限りなく合わせる仕掛けが存在した。
一蘭は着席するやいなや「お好みのラーメンはどんな感じ?」というような紙が現れる。その紙に「麺は固く、やわらかく」、「スープの出汁は濃いく、薄く」みたいな個々が微妙に味を調整するための病院で言うならば問診表がテーブルに置いてある。私は個人的にラーメンに白ねぎは絶対に合わないと考えているので青ねぎを選択して麺も「普通」でオーダーすることに。
気がつくと勉強のために再訪したにも関わらず既に一般消費者の観点になっていた(笑)
しかし、私は小規模だとは言え飲食業界に従事する者。「ハッ!」と気付き分析を開始する。つまりは、どれだけ徹底的にこだわって作ったラーメンと言えど人それぞれ趣向があり、十人十色。それを少しでも来店した全員に「美味しかった」と言わせるような工夫が「ラーメン屋さんの問診表」として表現されたのだと感じた。
実際に会って聞いたことがないから真意は不明だがきっと、一蘭の代表者である吉富氏は「この組み合わせが最高の一蘭のバランスであり最高に美味いとんこつラーメンだ!」というテイストがあるのだと思う。一般的に言われる「職人」ならば絶対に譲れないポイントではあるものの大規模なチェーン展開をするということは、その部分まで曲げなくては出来ない、いや、リスキーなことなのだと感じた。「世界一とんこつラーメンを研究している」という自負がある経営者であり職人の吉富氏がプライドを捨ててまでやらなくてはならないのが標準化であり大規模なチェーン店化なのだと目から鱗が落ちた気分になった。
また、このシステムはマーケティング的にかなり重要な役割を果たす。この紙はアンケート用紙ではなくオーダー用紙であり、「お客様の声」みたいな「なんとなく書く」みたいな紙ではない。まさに今から自分が食べるラーメンのオーダーなのだから馬鹿正直に書くのは当たり前。その結果、すばらしいマーケティングデータが一蘭に蓄積されていく。なんだ、この仕組みは!
つまり一蘭というラーメン屋さんは徹底的に考えつくされた仕組みで成り立っているということです。
玉子の含有量が多いのか、とんこつラーメン屋さんには珍しく「美味い麺」だったことは間違いない。
経営陣のパートナーから造反が
一蘭のことを調べていくとFMラジオ番組ベンチャーチャンネルというネットラジオに辿り着いた。福岡をメインとしたベンチャー企業の経営者が数多く出演している中で一蘭の吉富氏が出ていた。パーソナリティーが「今や全国区となった一蘭ですが、創業から今まで大変な語靴労をされたのではないですか?」と問われて吉冨氏は以下のように答えています。
創業時も確かに苦労しましたが会社の規模がそこそこ大きくなったころに経営陣の中の信頼していた人物から造反を受けて約200人ほどの写真を連れて辞めて行ったんです。それが最も精神的に辛かったです。
その頃の私は「一体どうやったらもっともっと美味しいラーメンが作れるのか」それしか考えていなかった。その部分での衝突があったと思う。この件以降、美味しいラーメンを追及するのは当然として会社として社員が最も大きな資産なのだと再認識して企業理念の策定などの内部環境の整備を急ピッチに行っていきました。
社内で一体、何が起こったのかは定かではないけれど代表者と経営陣の間で方向性の確執が大きかったのは想像できる。私のような小規模飲食店はひたすら高品質な提供物の開発に精を出すくらいがせいぜいだが、ある程度の規模になってくると「美味しい」だけではダメなのだと感じた。
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