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週末起業でたこ焼き屋

繁華街の住人達

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つくづく繁華街の住人達は個性的でたくましいと感じる。

2016年12月に2店舗目をオープンして以来、私自身も完全に繁華街の住人となった。2店舗分の掃除や仕込みを行う必要があるので13時にはお店に入らなければならない。明け方に就寝して正午まで熟睡することも多く自宅とお店の往復の毎日。

どっぷりと繁華街で生きていると今まで気づかなかった事も数多くあり昼間の常識とかけ離れた人たちには驚かされる。

老婆が立つ繁華街の外れ

私のお店は繁華街の中心部に位置している。夜中も街灯が数多くするので明るいのだが繁華街を少し離れた地域は街灯も少なく治安も悪い。そんな繁華街の外れにはいつも老婆が立っている場所がある。最初の頃は何をしているのか解らなかったが、ある日を境に理解することに。

ある日、お店の片づけを終えて歩いて帰っていると老婆が声をかけてきた。「お兄さん、どこに行くの?女の子はどう?」つまり彼女たちは客引きをしているのだ。お店を経営する前は繁華街に毎日出るようなことはなかったので気づかなかったけれど彼女たちは雨の日も雪の日も休むことなく毎日薄暗い繁華街の外れに立っている。

最近では、私が飲食店の人間だと理解してくれていて「お疲れさま」と挨拶をする。

ある日の深夜のこと。その日は強烈な寒波が到来していて夕方から雪が降り続いていた。普段は空車のタクシーで溢れている繁華街も雪のせいで見当たらない。仕方なく歩いて帰る。「まさか今日は立っていないだろう」と思いつつ繁華街の外れまでたどり着いた時に驚いた。年齢は80歳前後だと思われる老婆は頭に雪が積もった状態で立っていた。

自動販売機で暖かいお茶を買い老婆に「お疲れ様です」と手渡した。

老婆はとても喜んでくれて満面の笑みを浮かべつつ暖かいお茶を飲んだ。通常であれば暖かい部屋で寝ているはずの老婆が極寒の中で独り路上に立っている。そうまでしないと生きて行くことができない老婆を見て生きていくのは大変な事だと痛感した。どのような経緯で過酷な晩年になったのかは解らない。でも彼女は生きる為に極寒の路上に独り立ち続ける必要があるのだ。

老婆と言えは先日も驚かされたことがある。

お店の近所に古くからある喫茶店がある。そのお店には1カ月に数回ほどトーストセットを食べに行く。

その日もいつものトーストセットを食べていたら乳母車を押して歩く老婆が現れた。喫茶店のママが「あぁ、ママお疲れ様です。今日も寒いですね」と声をかけた。思わず耳を疑った。御年80歳は軽く超えているであろう老婆が「ママ」なのだ。一体、どんなお店を経営しているのかと想像を巡られていると老婆が「そうそう、昨日は〇〇さんが来たのよ。あの人、相変わらず手癖が悪くて身体を触ってくるから大変だった」と言うのだ。

一体、どのようなお客様がこの老婆にセクハラするのか??

しかも、どんなお店なのか全く想像が出来ないが確実に彼女はお店のママであり経営者なのだ。繁華街には数多くの妖怪が生息するのだと改めて思った。

経営が苦しいカラオケバーのマスター

お店の近所に5坪ほどのカラオケバーがある。40代半ばのマスターが1人で運営している。営業時間は20時から翌朝の8時まで。カラオケとお酒と乾き物しかない。自称、慢性アルコール中毒のマスターはいつも泥酔している。お客がいない時はお店の硬い椅子の上で寝ている。このお店はセット料金が無いので水割り一杯くらいなら数百円ですむのでリーズナブルだ。

先日、お店が終わり明け方に店に立ち寄ってみた。

いつも通り椅子で熟睡しており泥酔していた。開業してからの8年間に休みは正月くらいだと言う。毎日、お店で泥酔した結果として体調もすぐれないことに。いつもは愚痴など言わないマスターだが先日は違った。年明け以降の売上不振で家賃も支払うことができないと落ち込んでいた。例にもれず私のお店の売上も年明け以降は低迷しているのだが家賃は支払える。

仕入れがほとんどないバーという営業形態で家賃を支払うことが出来ないというのは相当に深刻な状況だと言うことが伺える。マスターは毎日、毎日、客が来ない店内で独り客を待ち続けている。

あのような状態に陥るとお店を廃業しても昼の仕事に就くことは困難を極める。だから、辞めるにやめられない。

資金的に苦しい状況の中で食事も満足にとれないと嘆いていた。昨晩はお店であまった食材でカンタンな食事を作って持って行ってあげた。「どうしてそんなに親切にしてくれるのか」と聞いてくるので親切に理由などないと答えた。昼間の仕事で関わった人たちと違い、夜の世界の住人達は情に厚い。ある種の絆があると思う。

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