TKCの調査によると飲食店全体のうち最終利益(経常利益)が出ているのは全体の3割で残りの7割は赤字だという。
飲食店は儲からない?
TKCの調査(平成25年5月決算~7月決算速報)によると、飲食店全体としては利益が生じているのは3割だけだとのこと。この調査は平成25年だから深刻な構造不況に陥った現在ではもっと赤字飲食店の割合は増えていると推測される。
飲食店は誰でも容易に参入できるビジネスなのだが、それが故に競争が激しい。また、初期投資が大きいのも特徴で内装工事や厨房設備の新規調達などで数百万円から数千万円程度の初期投資が必要になる場合が多い。
原価率が高い飲食店の方が儲かる?
さらにTKCは興味深いデータを公表している。利益を出している飲食店の原価率が48%なのに対して赤字の飲食店の原価率は40%だという。通常、原価率が低い方が利益が上がると考えやすいのだが逆に原価率が高い方が儲かっている。
つまり、良い食材を使って美味しい料理を提供することによって結果的に黒字になっているということになる。
東京都中央区に本社を置く俺の株式会社が運営する俺のイタリアンや俺のフレンチなどの「俺のシリーズ」の飲食店は業績が急上昇中の注目飲食店。この飲食店の原価率は60%だという。原価率が高くても回転率も併せて高く、人気があるためにお店は常に満席状態。原価率が高くても高収益体質となっている代表例である。
同社の社長である坂本氏いわく「ミシュラン星付き級の料理人が腕をふるい、高級店の3分の1の価格で提供する。フード原価率60%超えでも、顧客を1日3回転以上させることで繁盛店の利益を実現する」とのこと。
やはり高品質な提供物というのが飲食店が成功する大前提であることがわかる。
名目値下げと実質値下げ
売上不振にあえぐ飲食店が広告宣伝をやり尽した後に実施する最終施策が値下げとなる。もちろん、広告宣伝をするにあたって値下げする訳だが値下げをすると当然のように利益も下がる。なので原価率も同時に下げていくことになる。
原価を下げると品質は低下。魔の悪循環が始まりお客様はどんどん離れていく。私は値下げに関しては2種類あると考えており週末起業のたこ焼き屋さんもオープンして以来、何回か値下げしている。値下げと言っても販売価格は下げていない。つまり高品質な食材を導入することによって原価率が上がり実質的な値下げとなる。
値下げとは販売価格を下げるパターンと利益額を下げるパターンの2種類あり、好循環を生み出すためには実質的な値下げをすることが必要となってくる。先に紹介した「俺のシリーズ」も原価率は高いけれど回転率が上がり結果的に利益を生み出すことに成功している。
無駄なコストをかけない
提供物の品質を向上させるためのコストは惜しみなくかけた方が良いと考えているけれど無駄な経費は徹底的に抑えなくては経営が成り立たないとも考えている。飲食店における無駄な経費とはズバリ広告宣伝費だ。フリーペーパーなどの媒体に掲載すると当然コストが発生する。最終的にその広告宣伝コストを支払うのはお客様になる。
お客様は決して広告宣伝コストを支払いたいとは思っていない。お客様に還元されることのない経費は生き銭とは言えない。また、よく飲食店における最大の集客術はお客様による口コミだという人がいる。お店側が過度に情報を発信している場合、そのお店の情報価値は下がる。それでは、せっかく口コミしてくれるお客様に申し訳ない。
なので、お客様に還元される投資は積極的に行う。それは食材の質だったりトイレットペーパーだったり調味料ということになる。
適正価格とは
飲食店における適正価格とはお客様の満足度より少しだけリーズナブルな価格設定だと考えている。私のお店で販売しているたこ焼きは1つ700円。これは絶妙な価格だと思う。650円でも750円でもダメだと考えており700円が最もしっくりと来る。よく食材原価に対して販売価格を決定する飲食店オーナーがいるけれど私の場合は感覚や感性で価格を決めている。
自分自身がお客様になったとして「これは適正価格だ」という価格設定を採用している。
だから、来店されるお客様もおおむね同じような感覚があるのだと思う。
あと私のお店ではキャパが小さいのでどうやっても年商が一千万円を超えることはない。つまり消費税を納税する必要がない。来年の4月以降に引き上げられる消費税率によって10%の課税となる。これは販売価格の1割なのでお客様負担は大きい。スモールビジネスは税制面においても有利だと言える。
もうすぐ1年となる週末起業のたこ焼き屋。毎日が楽しくて本当に始めてよかったと思う。
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