急速に進化し続けている人工知能が人間の代わりに仕事をする時代に突入している。5年後の就職活動は人工知能との戦いになるのか。
完全に人工知能が運用するヘッジファンドが登場
2016年1月に香港に本社を置くaidyia社が100%人工知能で運用するファンドをスタートさせた。ヘッジファンド(Hedge fund)とは、私募によって機関投資家や富裕層などから私的に大規模な資金を集め、金融派生商品などを活用した様々な手法で運用するファンドのことを意味する。日本国内で有名なヘッジファンドといえばライブドア事件で脚光を浴びた「村上ファンド」が思いつく。村上ファンドは2015年11月に証券取引等監視委員会から「空売り手法」で不正な利益を得ている可能性があるとして任意で事情聴取をうけている。
このような強引な取引は人間ならではの手法だが人工知能の場合はそのような判断はしない。膨大な経済データを基に冷静に取引を24時間365日淡々と行っていく。aidyia社の人工知能は一部の取引において失敗しても失敗の要因を自己分析して自ら進化していくシステムとのこと。aidyia社の経営者は「私たちが死んでも我が社の取引は続いていくから安心して欲しい」と発言している。人間は寿命があるので生まれた以上はいつかは死が訪れる。しかし人工知能に「死」という概念はない。
今後の金融市場は世界中の人工知能同士が熾烈な戦いを繰り広げることになる。日本におけるヘッジファンドは代表的な会社で約20社ほど存在する。その中でも最も最大級のヘッジファンドは農林中央金庫であり米国一流大学のMBA取得者約300人を抱える有価証券投資部門を武器に約80兆円もの資金を運用している。農林中央金庫はこれから人工知能を相手に戦っていかなくてはならない。まさに人間と人工知能の戦いといっても過言ではない。
クリエイティブな仕事も人工知能が台頭してくるのか
いくら人工知能が優れていてもクリエイティブな仕事はできないのではないか。このように思う方も少なくないはず。しかしながら、ロゴ制作やキャッチコピー制作などの人間が行っている仕事も徐々に人工知能に取られていく可能性がある。例えば今現在すでに「ジェネレーター」がインターネット上に存在しておりロゴやキャッチコピーも自動的に生成してくれる。キャッチコピーを生成するサイトでぽいっとキャッチコピーと言うサイトがある。指定の入力欄にキーワードを入力すると自動的にキャッチコピーを生成してくれるというもの。試しに「たこ焼き」と入力してみると以下のようなキャッチコピーが自動的に生成される。
- たこ焼きがあなたを救う
- たこ焼きが決めて!
- たこ焼きが見逃せない
- たこ焼きはこうでなくっちゃ
- たこ焼きはもう常識
- イチオシたこ焼き
- 賢いチョイス!今探していたのはこのたこ焼き
- きっと大丈夫なたこ焼き
- 私たちが選ぶたこ焼き
- 私の定番たこ焼き
- 勇気を持ってたこ焼き
- 自分にご褒美!たこ焼き
- 使う人の立場で考えたたこ焼き
- たこ焼きの王様
また、別サイトでコピーメカというサイトがある。このサイトは1.商品やサービスの名称、2.消費者がする行動、3.お店や商品の名称を入力するだけで自動的にコンセプトやキャッチコピーを生成してくれる。試しに入力してみると以下のようなキャッチコピーを自動生成してくれ、ご丁寧に解説まで付いている。
【キャッチコピー・企画コンセプト案1】あぁ、痛快なるたこ焼きかな
【解説】 痛快と思える理由を説明してください
【キャッチコピー・企画コンセプト案2】一度食べたらクセになるたこ焼き
【解説】 もうやめられませんね、これだけは。という気持ちを表現
【キャッチコピー・企画コンセプト案3】週末起業のたこ焼き屋と他のたこ焼き、違いはなにか?
【解説】 比較します。表にしてもいいですね
【キャッチコピー・企画コンセプト案4】さぁ、始まる、本気の週末起業のたこ焼き屋
【解説】 期待してしまいますね
今の段階では遊び的な要素が満載だが近い将来にはかなり高度なキャッチコピーやコンセプトを自動生成する人工知能が登場するかもしれない。
タクシー運転手の将来
繁華街で商売をしている私としては帰宅時にタクシーを利用する機会がある。一言でタクシーといっても運転手さんの性格や技術によって運転レベルは様々あり気分よく帰ることもあれば急ブレーキなどで不快な思いをすることもある。しかしそんなことも人工知能ならば均一化される。2016年2月14日に米運輸省の高速道路交通安全局(NHTSA)は人工知能による運転手の開発を進めているグーグル社に対して運転手なしで走る「完全自動運転車」では、人工知能(AI)を運転手とみなすと判断を下している。
今現在においても完全な自動運転とまではいかないまでも自動ブレーキや車線をはみ出さない補助機能などを有した運転補助システムが脚光を浴びている。スバルのアイサイトなどがその代表格。高速道路を走行する際には前に走っている車との車間距離を自動的に一定間隔に取り続けながら走行するといった機能が付いており実際に事故率も低下している。
このままいくと自動運転が実用化するまでに時間はそこまでかからないのではないかと感じる。近い将来のバスやタクシーやトラックなどの職業運転手の多くは職を失う危機に瀕する事になるのではないか。
人の感情をよむ人工知能
人工知能やロボットには感情とという概念は存在しない。人間は感情の動物だと言われているがロボットには怒りや悲しみを感じることができない。これまでは一般的にこのように言われてきた。しかし、今年に入りIBMの人工知能Watsonは「空気を読む」音声返答機能を搭載しており話題になっている。IBMはワトソンを、自然言語を理解・学習し人間の意思決定を支援する『コグニティブ・コンピューティング・システム(Cognitive Computing System)』と定義しており、極めて自然な応対をすることが可能だという。
IBMは近日中に実証実験を兼ねて全米で人気のクイズ番組ジェパディ!にワトソンを出演させると発表している。クイズ番組では自然言語で問われた質問を理解して、文脈を含めて質問の趣旨を理解し人工知能として大量の情報の中から適切な回答を選択した上で回答する必要がある。ワトソンはこのような人間でしか読み取ることができなかった微妙なニュアンスを読み取ることができる。今現在は人間が担っているコールセンターやカスタマーサポートセンターなどの業務も近い将来は人工知能が担うことになる可能性が高い。
既に2016年2月18日にはIBMとソフトバンク株式会社がIBM Watson日本語版のサービス提供開始を発表している。コールセンターなどに従事している人たちはこの流れを注意深く見ていく必要がある。
この流れは止まらない
私個人としては人工知能が人間の職を奪いロボットと競争していく社会などは望んでいない。しかしながら、この流れは止まることはないだろう。大きな流れに抵抗することを考えるより時代の変化に自分自身を対応させていくことを考えなければ生き残ることはできない。以前、経済アナリストの森永卓郎氏はNHKラジオの社会の見方・私の視点という番組で人工知能の普及に関して「辛く苦しい仕事は全てロボットにしてもらって人間は遊んでおけば良い」と言っていたのを思い出す。確かにその通りなのだが人間は何らかの労働をしなければお金を得ることができず最終的には生活できなくなってしまう。今後はロボットや人工知能が出来ない分野を探していかなくてはならなくなる。たこ焼き屋のロボット化もそう遠くないかもしれない。
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