いよいよ11月に突入した。年末に向けて繁華街は盛り上がりを見せるのか
最も冷え込みが激しかった10月
私が飲食店を営んでいる「とある政令指定都市」の繁華街では2016年10月に過去に例がないほどの冷え込みを記録している。プロ野球の日本シリーズの視聴率が70%などと発表されており自宅での野球観戦が繁華街の冷え込む主原因だと言われていた。
いつもの週末では人通りも多く盛り上がるはずのネオン街が閑散とした状況。流動客の来店を見込んでいる路面店は悲惨な状況となった。数多くのお客様で盛り上がっていたのはスポーツバーくらいのもので、その他の飲食店は売上の激減に頭を悩ませている。
酒が売れない
飲食店に閑古鳥が鳴くと酒屋も連動して閑古鳥が鳴く。いつもならば夕方まで酒屋の配達トラックが右往左往している繁華街だが10月は昼すぎには配達のトラックは姿を消す。
私が取引している酒屋も「前代未聞の事態です」と言っていた。体力が無い小規模飲食店の多くは資金力に乏しい。当然、忙しい日もあれば暇な日もある。しかしながら、一か月以上も暇な時期が続くと資金繰りが急速に悪化していく。するとどうなるか。酒代の延滞が発生することになる。
酒屋の多くは売れないばかりか酒代の遅延が重くのしかかることになる。
閑古鳥は飲食店ばかりではない
閑古鳥が鳴いているのは飲食店ばかりではない。私のお店に定期的にアルバイトに来ているアパレルショップの社長の話によると繁華街の衰退と連動した形で来客数が激減しているとのこと。
この街の商売人たちは私も含めて「一体どうしたのだろう」と首をかしげる。大多数の店舗経営者はプロ野球の日本シリーズが原因だと考えていた。例にもれず私自身も同様に考えていた。
日本シリーズが終わる
そしてついに日本シリーズが終わった。日本シリーズ最終日に店が終わってから飲食店仲間のお店を数件ほどまわってみた。すると一応に「あぁ、ようやく日本シリーズが終わった。これでまた通常通りの繁華街に戻る」と安堵の声ばかりを聞くことに。
飲食店も物販の店も酒屋も全ての人が「これで通常通りの状態に戻る」と判断していた。私自身も同じ感覚だったのだが現実は違っていた。
日本シリーズが終わってから2日ほどたった現在も繁華街は閑散としている。いや、むしろ日本シリーズの期間よりも閑散としている。昨晩など、まるで元旦の夜のような人通りなのだ。飲食店の仲間の顔は悲壮感から絶望感へと変わりつつある。
酒代の遅延から家賃の遅延に
資金繰りに悪化するとまず最初に取引業者への代金支払いが滞る。そのタイミングで売上が回復しなければ次は家賃となる。取引がある不動産管理会社の話によると例年10月~11月に比べてテナントの家賃滞納率は高いという話だ。
私の肌感覚でいうと繁華街の飲食店は既に限界点に達しているとみて良い。
このままの状況が続けば最悪の事態に発展するのは間違いない。しかし、来月は12月。忘年会シーズンの到来だ。飲食店経営者はボーナス時期と忘年会シーズンに期待をかける。だから、今は歯を食いしばって耐えている。
目的意識を持ったお客様
このような状況の中で私のお店もまた例外なく売上が下がっている。とはいえ幸いにも他の路面店よりは下がっている率は低い。率にして15%程度に収まっている。
私のお店はたこ焼きと生ビールしかないので来客されるお客様は明確に目的意識を持っている。繁華街を歩いていて「なんとなく」ふらっと立ち寄るような店ではない。
今回、私が助かったのはこの部分の要素が大きいと考えている。路面店の多くは曖昧な動機のお客様が売り上げの多くを占めている。「なんとなく」ふらっと立ち寄れるように入店しやすいよう店を作っている。だからこそ大多数の経営者が路面店を望む。
しかしながら、人通りが極めて少なくなっている現在は路面店のメリットを発揮できていないのが現状。当然、路面店の家賃は高額なのでダブルパンチとなっている。
今回ばかりはコンセプトを明確にしたお店を運営していることを心から感謝したものだ。もし仮に何の特色もなく利便性だけを追求したサービス飲食店を経営していると考えたら背筋が寒くなる。
大統領選挙と年末商戦
いよいよ来週に迫ったアメリカ大統領選挙だが数多くの暴言が問題視されているトランプ氏の支持率がクリントン氏を上回ったとの報道が飛び出した。
トランプ氏が支持率上回る ワシントン・ポスト調査(日本経済新聞)
ここ最近の株高はクリントン氏が優勢との判断をした投資家がリスクオンで株を買っていたからに他ならない。それが今回の報道によって一気にリスクオフに転じた。その結果、日経平均株価は300円を超える下げとなり一時は1ドル105円まで達していた為替も103円まで下がってきた。
来週、まさかのトランプ大統領誕生ともなれば世界中の株価は急激に下落するだろう。現在はまだ投資家の多くが支持率がトランプ氏優勢となっていても最終的にはクリントン氏が大統領になると踏んでいるからだ。トランプ大統領誕生を市場は折り込んでいない。
ただでさえ、閑散としている繁華街にトランプショックが到来するとどうなるか。極めて苦しい中で年末の売上にわずかな期待をしている飲食店の多くはトドメを刺されることになりかねない。
海の向こうの出来事は対岸の火事ではない。密接に連動する。注意深く情勢を見ていかなくてはならない。
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