「リーマンショック前と似ている」これは誰のコメントでもなく安倍首相の言葉だ。
G7首脳会議でリーマンショック前夜だと発言した安倍首相
開催会場の志摩観光ホテル ザ クラシック
伊勢志摩サミットで日本国の総理大臣である安倍首相はリーマンショック前夜との見解を示した。それを踏まえたうえで消費増税の先送りを示唆している。マスコミや野党はこぞって以下のように政府を批判するだろう。
「消費増税を延期しなくてはならないということはアベノミクスの失敗を意味する。安倍首相は自身の政策であるアベノミクスの失敗を認めたくないからリーマンショック前夜だと言い訳しているのだ!」
大笑いである。当ブログの過去記事のインフレ目標2%とスタグフレーションでも書いたのだがアベノミクスの目的は景気回復ではなく国債の金利上昇を限界まで抑えて財政破綻を先延ばしすることなのだからアベノミクスは成功しているのである。
前回も書いたが景気が回復すると企業の資金需要が高まり長期金利が上昇する。その結果、国債の利払いが増加し国家財政は窮地に追い込まれる。だから景気回復してもらっては困るのが日本政府の立場。今回、消費増税を見送るということは政府や財務省が恐れている景気回復が実現されていないという事になり、今後も短期的・中期的にも景気が回復する見込みがないことを意味する。
しかし、ここで新たな国家的リスクが予想される。それは国債の格下げだ。現在、日本国債格付けはA+もしくはAまで下げられている。これが消費増税先送りとなると更なる格下げとなる可能性が高くなり政府や財務省が最も恐れている国債の金利上昇が現実のものとなる。
いつ世界大恐慌になっても不思議ではない
つい先月まで安倍首相は消費増税に関して「リーマンショックや東日本大震災級のことが起こらない限り実施する。」と断言していた。それが5月末にはリーマンショック前夜だから消費増税は見送るとしている。2008年のリーマンショックはアメリカ発の金融危機なのだが、アメリカのオバマ大統領を目の前にしてリーマンショック前夜だと言い切るのは異常事態だと感じる。
しかしながら安倍首相の発言は正常なのだ。アメリカでは第2のサブプライムローンである自動車を担保にした大規模な金融商品のバブルが弾ける寸前。さらに世界最大の銀行と言われているドイツ銀行も発足以来、最大の経営危機を迎えているとも言われている。
中国バブルの崩壊、第2のサブプライムローンの存在、ドイツ銀行の問題、日本の財政危機の問題、量的緩和の限界が近づいているなど世界経済は首の皮1枚でつながっている状況だ。
これから起こること
アベノミクスによって財政破綻の先延ばしは成功したものの永遠にそれが続くわけではない。このような状況の中で巨額な日本の累積債務をどのような手段で解決するのか。その方法は1つしかない。それはハイパーインフレによって債務を圧縮するというものだ。ハイパーインフレとはお金の価値が下がるから物価が跳ね上がる状態のことを意味する。例えばある会社が1000万円の借金があったとする。お金の価値が100分の1になれば額面上は1000万円でも実質は10万円程度まで借金が圧縮される。これと同じ理屈なのだ。
ここで興味深い記事を発見した。旧大蔵省出身で早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄が書いた最新のコラムだ。同氏は行き着く果てはドル1000円になると言及している。また、日本は財政支出を中央銀行の紙幣増刷で賄う「ヘリコプターマネー」にすでに手を染めており、世界最悪の公的債務を高インフレで解決する可能性が高いとも言っている。日本は既に悪性インフレであるスタグフレーションに突入していると認識している。ハイパーインフレとはスタグフレーションが極端に進行したものだ。つまり、今現在の位置づけとしてはハイパーインフレの直前だということになる。下記のコラムは必読である。
ヘリコプターは離陸済み、行き着く果てはドル1000円か-野口悠紀雄氏
スタグフレーションやハイパーインフレというのは簡単に考えるとお金の価値が大幅に下がることを意味する。防衛策としてはお金を何らかのモノや金融資産に換えておくということである程度の防衛はできるのではないだろうか。と、言うよりもそんな事くらいしか対策することができないのが現状だと言える。
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